【明日への扉】漆掻き職人 〜 日本の美の守り人 〜

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日本を代表する伝統工芸品、漆器。その美しさは古来、人々を魅了してきた。

漆器の美しさの源はその表面に塗られた漆。漆は天然塗料であり、漆の木から採取される。

日本各地で作られ続けている漆器だが、実は使われている漆の大半が外国産で、国産漆はわずか5%ほどしかない。この貴重な国産漆は、国宝や文化財の修復にも不可欠な存在だ。

さらに、漆を採取する漆掻き職人も全国で100人に満たないという。

国産漆のおよそ8割を生産し、伝統工芸品・浄法寺塗(じょうぼうじぬり)の産地としても知られる岩手県二戸市浄法寺町。この浄法寺で国産漆を守り、伝統工芸を支えたいと努力を続ける若者がいる。

漆掻き職人、秋本風香(あきもと ふうか)さん。

東京生まれの秋本さんは、学生時代に金属工芸を学び、同時に漆の美しさにも強く心惹かれた。大学卒業を控えたある日、国産漆の苦境を知る。そして見つけたのが、二戸市の地域おこし協力隊だった。

浄法寺は古くから漆の生産が盛んで、江戸時代には藩を上げて奨励された。明治以降も国内随一の生産量を誇っていた。しかし、その後は生活様式の変化や外国産漆の流入により、需要と生産量が激減。最盛期には300人ほどいた漆掻き職人も、数人のみになってしまったという。

そこで、およそ30年前に漆掻き技術の保存会が発足され、漆の木の植樹や、職人育成などの取り組みが始まった。秋本さんが地域おこし協力隊の一員として浄法寺で漆掻き職人の修業を始めたのは5年前だ。

秋本さんは、先人たちに語り継がれる言葉を大切にしている。

「漆の1滴は血の1滴だから、絶対に無駄にしない」

漆は樹齢15年から20年の漆の木から採取する。一本の木から採れる漆の量はわずか200ミリリットル、ちょうど牛乳瓶一本分だ。漆は6月から10月のおよそ4か月間だけしか採取できず、さらに、シーズンが終われば漆の木をすべて切り倒す。もう漆を出す力が残っていないからだ。

しかしその後、根から新しい芽が出て、十数年後には再び漆が採れるようになる。漆掻き職人たちは命の循環の中で、その恵みに感謝しながら日々、働いてきたのだ。

「言わば漆掻きは漆の木の血液をもらっているわけですから、やっぱり丁寧に、木になるべく長生きしてもらって、最後まで採り切ろうという気持ちでやっています」と秋本さんは話す。

秋本さんは若手の漆掻き職人として働く一方、3年前からは道具作りにも挑んでいる。漆掻きの道具を作る鍛冶も今はほとんどおらず、学生時代に金属工芸を学んでいた秋本さんに白羽の矢が立ったのだ。

漆掻きには特別な道具を使う。漆カマはゴツゴツとした樹皮を削り、表面を整えるために使う。曲がった刃と枝分かれした刃が特徴的な漆カンナは、最も重要な道具だ。

秋本さんが製作できるのは、今のところ漆カンナだけ。将来はすべての道具を作れるようになり、他の職人たちに使ってもらうことが目標だ。

福島県の鍛冶、鈴木康人(すずき やすと)さんは、年に数回浄法寺町を訪れて秋本さんに技術指導を行っている。鈴木さんも現状を憂い、10年ほど前に技術を受け継いだ。そんな鈴木さんでも、漆カンナは特に難しいという。

漆掻き職人の仕事を理解し、道具を作る秋本さんは、いわば板前が包丁を作っているようなもの。「そんな人はなかなかいない」と鈴木さんは言う。

さらに、「すごいことに首を突っ込んでいるんだよなという恐怖心みたいなものをもっと持ってもらいたいし、その真剣さがもっと日常の中に浸透してくれればいいなと思っています。すごく楽しみです」と期待を込める。

漆掻き職人と鍛治。ふたつの道で奮闘する秋本さんの姿を追った。

続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。

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Text by Discovery編集部

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