美賊イルジメ伝

一枝の梅の花の下に捨てられていたイルジメは、ゴルチとヨルゴン和尚によって育てられ、清の高官の家に養子縁組される。養父母の愛情を受けながら育ったイルジメは、ある日、彼の出生の秘密を知った清の諜報員であるワン・ヘンボから実の両親のことを聞き、悩みに陥る。「梅の花は雪の中で咲き、寒さに震え、母は若くして別れに泣く...」という生母が直接書いた文章を見たイルジメは、愛する養父母を離れ、ワン・ヘンボを追って朝鮮に戻ることを決意する。

ワン・ヘンボと一緒に養父母を離れたイルジメは、彼らを追う群衆から無事に逃れて朝鮮に戻ってくる。彼の願い通り、実の両親に会うためにキム参判の家に行くが、祖母である老母の葬儀の最中であったため引き返す。一方、ワン・ヘンボはスパイとしての本性を露呈し、漢陽で大騒ぎになり、急遽出動したク・ジャミョンに捕まり、牢獄に入れられることになる。イルジメもまた、清の身なりのせいで逮捕され、ク・ジャミンに会う。イルジメがペンメの息子であることを知ったク・ジャミンと一緒に実の父親を探しに行くことになる。

実の父親から、息子ではないと断固として告げられたイルジメは、人間への不信感を募らせ、牢獄から脱出し、洞窟に隠れ、農家に降りて鶏の世話をしながら暮らすようになる。イルジメと一緒に脱出したワン・ヘンボは自分の祖国である清に逃げることになり、諜報員を逃したク・ジャミョンは千五百里に及ぶワン・ヘンボの追撃に乗り出す。一方、イルジメは山奥に住むダルという明るい少女と出会い、彼の父カン・セウクと一緒に暮らし、「長白剣法」を伝授されることになる。

イルジメを探すク・ジャミョンは、鶏盗難事件があった地方を調査中にダルが住んでいる小屋を発見し、官婢スリョンをダルになりすませてイルジメを捕まえる。しかし、思いがけずダルとカン・セウクの正体を知ることになり、やむを得ず国法によって処刑されてしまう。ダルを失ったイルジメは衝撃と悲しみ、そして怒りで一匹の野犬となり、漢陽をひっくり返すことになる。

ヨルゴン和尚によって閉じ込められたイルジメは、母親のお腹の中で赤ちゃんが生きるように、10ヶ月の時間が過ぎた後、再び世に出ることになる。ヨルゴン和尚の教え通りに悟りを開いたイルジメは、人間に対する怒りや嫉妬心を捨て、平穏な姿を取り戻す。ヨルゴン和尚と別れた後、イルジメは自分を育ててくれたゴルチを訪ね、静かな島村で幸せなひとときを過ごすことになる。しかし、イルジメに惚れた村の女性たちの嫉妬から恐ろしい事件が起こる。

荒れ狂う暴風雨に遭い、日本列島に漂流したイルジメは、忍者たちが住む村で命を救われる。ある忍者一家に救出されたイルジメは、名もなき病にかかった娘リエを朝鮮の山人参で救うことになり、その見返りに忍術を学ぶことになる。一方、ク・ジャミョンは、イルジメが関わった殺人事件を解決できずに帰郷することになり、そこで危険にさらされたペンメを救うが、またもや冷ややかな反応を受け、惜しまれつつ引き返すことになる。その頃、イルジメが姿を消した漢陽では、ポンソニ派とヘドンチョン派が対立して庶民を脅かし、イルジメは3年ぶりに再び漢陽に姿を現すことになる。

漢陽を揺るがすポンソニ派とヘドンチョン派の対立でク・ジャミョンが復職することになり、それを恐れたワン・ヘンボは、獄中にいる間に磨いた技術で脱獄に成功し、ポンソニ派の一員となる。3年ぶりに日本から帰国し、漢陽に姿を現したイルジメはウォルヒを訪ねる。イルジメに会うことだけを待ち望んでいたウォルヒと深い絆を結ぶことになる。芸者に扮した二人の盗賊団の計画を知ったイルジメは、ウォルヒに他人に見られてはいけないものを預ける。

ウォルヒと幸せな日々を過ごすようになったイルジメは、キム・ジャジョムとポンソニ派から奪いとった金塊で、今後自分の印となる黄金の梅の枝を作り、本格的な盗賊団掃討に乗り出す。ポンソニ坡の一員として活躍中のワン・ヘンボと対峙することになったイルジメだが、著しく向上したイルジメの武芸の実力にワン・ヘンボは逃げ出し行方をくらます。一方、ク・ジャミョンは漢陽を荒らす二つの盗賊団であるヘドンチョン派とポンソニ派を掃討するためにヘドンチョン派に潜入し、卓越した捜査力でヘドンチョン派を掃討することに成功する。

ウォルヒと一緒に市場に出かけた際、偶然ゴルチに会ったイルジメは、密かにゴルチと一緒に暮らす方法を模索する。ク・ジャミョンはイルジメの助けを借りて、漢陽に残された最後の盗賊団であるポンソニ派の鎮圧に成功する。一方、イルジメは立場の弱い人々を苦しめ、武力で土地を奪った両班ユン・バンに報復することに成功する。イルジメが義賊として本格的に活躍する頃、ク・ジャミョンは、松島で一人暮らしをしているペンメに息子のイルジメの便りを伝えに行く。

ク・ジャミョンはペンメに、イルジメの知らせとともに、これまで抱いていた愛を告白する。一方、本格的な義賊活動を開始することになったイルジメは、穀物やお金を溜め込んで暮らす両班の財産を盗み、ご飯も食べられない貧しい庶民を助ける活躍を見せる。両班にとっては必ずなくすべき敵となり、庶民にとっては英雄となったイルジメ。しかし、一緒に住んでいるウォルヒと結婚式を挙げることになると、自分の置かれた状況や初恋のダルのことを考えて悩む。

ウォルヒとの結婚を約束したイルジメは、ダルを想うことで心が揺れ動く。 その上、次第にひどくなる両班たちの悪行で、毎晩家に帰れない日々が続く。 そんなある日、危険にさらされた両班の娘を助けたイルジメは、ウォルヒに彼女の面倒を見てもらうよう頼む。一方、いつの間にか下町の人気者になったチャドリは、イルジメの活躍話に夢中になっていたところ、イルジメにやられた金貸業を営む両班に捕まってしまう。