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【明日への扉】琵琶湖のほとりで生まれた伝統技法が世界に誇るものづくり ~近江一閑張に込められた親子三代の絆~

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昔ばなし『舌切り雀』では、大きいつづらと小さいつづらのどちらを選ぶかによって、おじいさんとおばあさんの運命が大きく変わってしまう。


苦しみと喜びの両極端を包み隠していた「つづら」がどんなものであったのか、幼心に興味を抱いた人も多かったのではないだろうか。


「つづら」は「葛籠(つづら)」とも書き、古くは衣類を収納する道具だった。その葛籠と同じものを今も作り続けている工房が、滋賀県湖南市にある「蛯谷工芸」だ。


蛯谷工芸は50年前から「近江一閑張」という伝統的な技法を独自に開発してきた先駆者だ。


そもそも「一閑張」とは漆器の工芸技法の一つで、竹や木で組んだ骨組みに和紙を張り重ね、漆を塗ったもの。「近江一閑張」は従来の一閑張とは異なり、素材に紙紐を用いる。すべてが紙でできているため、丈夫で軽く、扱いやすい。



蛯谷工芸の初代・蛯谷金介さんが考案した近江一閑張は、日本人の暮らしに寄り添う逸品を創出し続け、今や滋賀県の名産品に数えられるほどとなった。近江一閑張二段式箱(つづら)をはじめ、籠、盆、小物入れや、猫用の家(ちぐら)、なんと大きいものはテーブルまで、多彩な品ぞろえを見せる。


その近江一閑張も、存続の危機に見舞われたことがあったそうだ。



父・金介さんとともに伝統を守ってきた二代目・蛯谷豊さんは、息子の蛯谷亮太さん(28)にむりやり家業を継がせようとは思わなかったという。「どうしても伝統を繋げなければいけないとも思っていなかった」と語る豊さんのまなざしは、バイクレーサーとして邁進する若き亮太さんにあたたかく注がれていた。


しかしある時、サーキットを疾走していた亮太さんの人生を決定的に変えてしまう重大な出来事が起こった。


やがて事態が収束を迎え、亮太さんが改めて今まで歩んできた道のりを省みた時に、目に飛び込んできたのが近江一閑張の職人として日々精進する父の姿だった。


その時、亮太さんは「生まれてからずっとこの仕事で大きくしてもらっているので、潰してしまうのは惜しい」という思いを新たに、家業である近江一閑張を継ぐ決心をしたのだそうだ。


その後二年間の修行を経て一人前の職人となった亮太さんは、四年前に三代目を襲名し、祖父と父の志を引き継いだ。



「三代目が繁栄するのも衰退するのも別れ目」と話す亮太さん。そもそも革新的であった近江一閑張の伝統を守るとともに、時代に沿ってさらに革新的なものづくりにも挑戦し続けており、2018年にはイタリアで開催された「ミラノデザインウィーク」に出展する快挙を成し遂げた。


ゆくゆくは世界中に日本の「つづら」がお目見えする日もくるのだろうか。時代もお国柄も違えど、人は一閑張のつづらに運命を感じるのかもしれない。



続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。



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Text by Discovery編集部

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