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【明日への扉】久留米絣作家 〜 父が遺した光 〜

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光芒を放つ織物がある。

国の重要無形文化財、久留米絣(くるめかすり)。艶やかな天然藍に、経緯(たてよこ)の糸が織りなす白い絣が、まるで満点の星空や夜空に咲く大輪の花火のように輝く。織り込まれた模様は絵画のような美しさだ。



久留米絣は、手仕事の技が光る。

糸の白さを残したり、藍に濃淡をつけたりするために、あらかじめ糸を括(くく)ってから天然藍で染める。染め上がった経糸と緯糸が合うように一本一本丁寧に調整しながら織り込んでいく作業は、数ヶ月の時間を要することもある。

藍甕の調整管理から最後の織りの工程に至るまで、すべてがつながって光を生み出す──それが久留米絣だ。

松枝崇弘さん(27)は、この「絣の光」を追い求めて、日々研鑽を重ねている。



福岡県久留米市に150年続く久留米絣の工房「藍生庵(らんせいあん)」の六代目に生まれた崇弘さんは、幼い頃より工房で遊びながら藍染めや機織りの技術を身につけた。五代目の父・松枝哲哉(哲也)さんは、数々の賞を受賞し、藍の美しさを追求してきた巨匠。そして母・小夜子さんも久留米絣を代表する作家のひとりだ。

「小さい頃に見よう見まねで一緒にやっていたからこそ、今できるものっていうのはあると思います」と崇弘さんは話す。

大学卒業後、父の勧めもあり、一度は一般企業に就職した。しかし、勤めて3年目の冬、父・哲哉さんに癌が見つかった。崇弘さんにとって、「この仕事に戻ってくるなら今しかないと覚悟を決めた瞬間」だった。

それから哲哉さんは命を削り、病室から崇弘さんに絣の技術を教えた。そしてわずか半年後、崇弘さんにすべてを託して、旅立った。

小夜子さんはその時を振り返り、こう語る。

「限られた時間の中で伝えなければいけないという想いがあったでしょうし、崇弘は言葉ひとつひとつをしっかり受け止めていったのではないでしょうか。同じ道を歩んでいくという想いが、哲哉さんから崇弘に繋がっていったのではないかなと受け止めています」。



崇弘さんは藍への向き合い方を父から学んだ。

泡立ち、色、匂い、時には味を確かめ、五感全てで藍と対話をする。

「自分がどれだけ手をかけてあげるか、毎日愛情を持って接していけるかによって、藍がどれだけ美しい色を返してくれるかが変わってくる」と崇弘さんは話す。



藍のある生活の中に生まれ、藍と共に生き、藍と共に一生を終える──。

藍に生涯を捧げた父・哲哉さんの遺志を受け継いだ崇弘さんは、「父の存在自体が僕にとっては光のようなもの」と語る。

そんな崇弘さんの表情も、また揺るぎない光を湛えている。


*ディスカバリーチャンネルでは2022年6月16日放映(再放送2022年6月26日放映)



~at home presents明日への扉~

ディスカバリーチャンネルにて毎月第3木曜日 19:30~20:00、再放送は翌々週の日曜日 08:30~09:00に放送中


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Text by Discovery編集部

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