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【明日への扉】筆の命は二度吹きこまれる~川尻筆に注ぎ込まれた情熱と技術~

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高級筆として広く名を馳せる「川尻筆」。筆の四大産地のひとつ、広島県呉市川尻町で作られるようになったのは江戸時代末期だという。


もともと農閑期に作られていた川尻筆は、獣毛を穂首の主原料とし、「練り混ぜ」という高度な毛混ぜの技法など、古くからの技法によって高水準の品質を持つ。


一本の筆を生み出すまでには実に70を超える工程がある。そして、その工程の一つひとつに手を掛ければかけるほど、筆は良いものになるそうだ。一本の筆にどれだけの情熱と技術を注ぎこめるかが、職人の腕の見せどころ――。



川尻町で代々続く文進堂畑製筆所の三代目・畑義幸さんは、筆づくりに惜しみない情熱と技術を注いでいる職人のひとりだ。


文進堂畑製筆所は、1930年(昭和5年)に創業して以来、90年間筆づくりの道を極めてきた。筆の多くが分業で作られている現代において、文進堂では筆師が全工程をひとりで仕上げ、書家ひとりひとりに合わせた完全オーダーメイドの筆を作り続けている。


とりわけ義幸さんが技術を磨いてきたのが羊毛筆だ。貴重な野生の雄ヤギの毛で作られたものは、毛先が柔軟で墨含みも優れており、多くの書家に愛されてやまない。


そしてその技を受け継いだのが息子である四代目・畑幸壯さん(32)だ。


幸壯さんは幼い頃から筆師になるのが夢だったという。しかし、その夢を一度は諦めなければならなかった。大学を卒業し、いざ父の工房に弟子入りするという矢先に、義幸さんが事故で頸椎を損傷する大怪我を負ってしまったのだ。


医師にはもう筆づくりができないかもしれないと言われた。その時、幸壯さんは、父に教えを請うことができないのなら意味がないと思い、夢を諦めて一般企業に就職することを選んだ。


「父の作っている筆の跡を継ぎたい。その筆を僕も作り、さらに超えていきたい」――このような熱い想いがあったからこそ、断念せざるを得なかった筆師への道。


その熱い想いに応えるかのように、義幸さんは一年に及ぶリハビリの末、奇跡的な回復を遂げて見事筆師に復帰した。


「父がまた筆をつくることができるようになり、本当にうれしかったですね。さらに気を引き締め、筆師の門を叩かせていただきました」と幸壯さんは晴れやかに語る。



義幸さんの生み出す筆は多くの書家をうならせ続けている。その功績が讃えられ、2019年には瑞宝単光章を受章された。


そして父の技を継承し、日々切磋琢磨している幸壯さんは、こう語る。


「僕がつくった時点ではあくまで筆なんです。けれども、そこから使い手の方に渡って、そこで様々な意味を持つと思います。大切な人への想いをしたためる筆であったり、作品を書く筆であったり…。そこで本当に意味を与えてもらうものなんだと思います。」


一本の筆に筆師が命を吹き込み、二度目の命を書家が吹き込む。その真摯な営みを、映像でじっくりとご覧いただきたい。




続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。

 

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Text by Discovery編集部

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