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【明日への扉】武士の魂が宿る鎧兜~江戸甲冑という総合芸術~

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男の子の健やかな成長を願い、端午の節句に贈られる五月人形。鎧飾りや兜飾りには「身体を守る」という意味合いが込められている。


かつて戦乱の世を生きた武将にとって、鎧兜は最大の防具であったと同時に、敵を威嚇し自らの威厳を誇示するシンボルでもあった。金工・漆工・染色・織り…強く美しい鎧兜を作るために集約されたあらゆる技術の粋は、寸法こそは違えども現代の五月人形にそのまま受け継がれてきた。



なかでも江戸甲冑は綿密な時代考証のもとに鎧兜を再現しており、日本の鎧文化を後世に伝える貴重な伝統工芸だ。本物の甲冑と同じように細部の部品に至るまで手作業で作られ、膨大な数の部品が使われている。


明治時代から代々続く甲冑師の家に生まれた加藤拓実さん(22)は、幼い頃から江戸甲冑の存在を身近に感じていた。初節句に父から贈られた大鎧の美しさに感銘を受け、幼心にも「自分もいつかこういうものを作りたい」と強く思ったという。



中学校で進路を決める頃にはすでに甲冑師になる決心を固めていた。東京都立工芸高等学校で金工を学んだのち、祖父と父が営む工房に弟子入りした。


江戸甲冑を作り始めて5年が経った今、拓実さんは兜づくりの全工程をひとりで任されている。さらに修行を積んで父と祖父のレベルにまで追いつき、やがてはふたりを超えなければいけないと、日々研鑽を積んでいる。


そんな拓実さんの制作現場にカメラが密着した。作っているのは源義経公ゆかりの「牡丹金物の兜」。


まず頭を守る鉢づくりから始まり、矢や刀から首を守る「しころ」、絹の組み紐でしころを編み上げる「威(おどし)」、顔を守るための吹き返し、総角(あげまき)や鍬形などの装飾品が、それぞれ丁寧な手作業によって作られ、組み立てられていく。ひとつひとつの部品には強度を保つ工夫や縁起をかつぐ意味合いが込められており、それぞれの歴史的意義を理解することで作品により深みが生まれるのだそうだ。


戦の洗礼を受けて磨き上げられてきた甲冑にはスキがなく、無駄なところなど一切ない。先人の知恵と技術とが受け継がれ、敵が前後左右どこから襲いかかってこようとも、持ち主の命を守るように作られている。



「甲冑は武将にとって命と同等だったのではないか」と拓実さんは語る。そしてその「命を守る」という大切な使命を代々受け継いできた加藤家において、若い拓実さんに注がれる期待は大きい。

続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。

 

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Text by Discovery編集部

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