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【明日への扉】魂を鎮める祈りの火〜和火に魅せられた花火師〜

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「花火」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、夜空に咲きほこる大輪の花々だろうか、それとも優美な光を散らす線香花火だろうか。

 

どちらも繊細で、時には大胆で、儚いからこそ美しい。花火は、江戸の昔より日本人の心に咲き続けている原風景だ。



江戸時代中期に入ってから、花火は庶民が親しむものになったという。疫病と飢饉により多数の死者が出た享保18年(1733年)には、8代目将軍徳川吉宗が慰霊と悪霊退散を祈って現在の隅田川である両国大川で水神祭を催し、そこで花火が披露された。当時の花火は鑑賞性よりも祈祷の意味合いが強かったことが伺われる。これは、隅田川花火大会の起源でもある。


ところで、江戸時代の花火はどれもみな橙(だいだい)や赤で描かれていることにお気づきだろうか。明治以降、日本に輸入された様々な薬剤を使ってカラフルに変化した現代の花火が「洋火」と呼ばれるのに対し、浮世絵などに描かれている赤褐色の花火は古来、日本の花火師たちが作ってきた「和火」と呼ばれるそうだ。心を落ち着かせてくれる深い色合いの和火は、およそ300年のあいだ日本人の祈りを伝えてきた。


この和火に想いを寄せ、日々その伝統と向き合う職人がいる。佐々木厳さん、36歳。「花火師」ではなく「和火師」を名乗るのは、「和火一本でやっていきたい」という並々ならぬ決意からだ。



埼玉県で生まれ育った佐々木さんは、花火に魅せられ、大学を卒業後、花火の道に進むことを決意し、縁あって山梨県市川三郷町の老舗・齊木煙火本店に入社。そこで師匠となる飯田茂雄さんと出逢う。飯田師匠の指導のもと、花火師として技を磨く日々は楽しく、充実したものだった。目指すは花火の全国大会での優勝だった。


そして2012年、全国花火競技大会「大曲の花火」で、みごと創造花火の部において準優勝を果たした。飯田師匠率いるチームの努力が結実した、たしかな手応えであるはずだった。


ところが、競技花火の表彰台は佐々木さんにとって必ずしも晴れ晴れとしたものではなかったのだ。表彰台に上る嬉しさよりも、東日本大震災の時に花火師としてなにもできなかった悔しさが残った。



祈りの花火を和火で打ち上げたい。エンターテインメントと芸術性の世界から一歩離れて、祈りをテーマにした花火を打ち上げたいーー。


古来、和火に込められていた慰霊、鎮魂、五穀豊穣の祈念。その伝統を引き継ぎ、その深い色合いをさらに追求し続けるために、佐々木さんは独立を決意した。



「和火には場所を癒したりとか、見ている人の心を癒したりとか、そういった不思議な力があるのかなと思っています」。佐々木さんは物静かな、しかし強い意志がみなぎる口調でこう語る。そして、そんな佐々木さんが心を込めて作る線香花火にも、打ち上げ花火にも、時代を超えた壮大な物語がある。


ぜひ、映像でその和火の美しさを心ゆくまで味わっていただきたい。


続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。


~at home presents明日への扉~


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