【明日への扉】京蒔絵師 〜 心に届くデザイン 〜
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京都市在住の島本恵未さんは、26歳のとき、夫と一緒に漆工芸の工房「表望堂(ひょうぼうどう)」を立ち上げた。
夫の晃則(てるのり)さんは、「塗師(ぬし)」とも呼ばれる漆職人だ。神社仏閣や料亭などの修復から、モダンな漆器の作品製作まで、幅広く活躍している。そして、蒔絵師として13年目になる恵未さんは、蒔絵の技術を習得して間もない20代前半から数々の賞を受賞し、漆器だけでなくガラスに蒔絵を施すなど、新たな試みにも取り組んでいる。
昔から、漆を塗るのは塗師、そしてその上に蒔絵を施すのは蒔絵師と、それぞれの職人の手による分業で漆器は作られてきた。
蒔絵とは漆器の装飾方法で、漆で描いた絵の上に金粉などを蒔いて加飾する技法のことだ。蒔絵は、貝で装飾する螺鈿(らでん)よりも後の奈良時代に始まり、平安時代に入ってから京都で発展したとされている。
その発展を後押ししたのが、「茶の湯」の文化だった。特に、室町時代後期以降に確立した「わび茶」の精神を尊ぶ茶人たちが、主張しすぎず、簡素で静寂さを感じさせる茶道具を愛し続けてきた。
恵未さんは、茶道具である棗(なつめ)の製作を依頼されることが多い。彼女の作品は、客人たちの心を捉える魅力がありつつも、個性が強すぎず、茶会の空間にうまく馴染んでくれるのだという。
恵未さんの作品の特徴はデザイン性の高さ。懐かしさと新しさが融合した、斬新な作風が多くの人を魅了している。
一般的に、蒔絵師は決められた図案をもとに蒔絵を施すという。だが、恵未さんは先人の意匠を参考にしつつ、自分でデザインを考えて描いている。
子どもの頃から絵を描くことが好きだったという恵未さんは、もともと日本画を学ぶために京都の大学に進学した。そこで選んだ蒔絵の授業が、後に蒔絵師を目指すきっかけとなったという。
この日本画を学んだ強みがあってこそ、恵未さんの作品は古典の要素のものであっても現代風の匂いを感じさせるのだ。
「彼女は日本画から入っているので、ほかの蒔絵師とは違う雰囲気の絵がかけるんですよね。そこがまた良いところじゃないですかね」、夫の晃則さんはこう評価している。
今回恵未さんが蒔絵を施したのは、晃則さんが漆を塗った棗だ。製作にかけた時間はおよそ1か月。何度も漆を塗ること、研磨することを丁寧に繰り返して、輝くような光沢を放つ棗が完成した。
「一個一個、着実に、完璧に(工程を)積み上げていかないと、綺麗にならないんですよね」と話す恵未さん。だからこそ、仕上がった時の達成感はひとしおだという。
一つ一つの作品にストーリーを作り、命を吹き込む恵未さん。この棗には、どんな思いが込められているのだろうか。
続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。
~at home presents明日への扉~
ディスカバリーチャンネルにて毎月第3木曜日 19:30~20:00、再放送は翌々週の日曜日 08:30~09:00に放送中
明日への扉公式ページはこちらから。
https://www.athome-tobira.jp/
Text by Discovery編集部
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