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【明日への扉】木彫りが自分の生きる道〜井波彫刻 彫刻家・田中郁聡さんの10年の軌跡〜

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伝統を受け継ぐ若者は今──。


初めて田中郁聡さんの工房を訪れたのは2012年。当時、田中さんは独立したての井波彫刻職人だった。それから10年が経った今、田中さんは数々の大きな仕事を成し遂げつつ、彫刻家としての歩みを着実に進めている。


「今まで自分が彫ってきたものより良いものを彫りたいという思いが常にある」と話す田中さん。自分の信じる道を邁進するひたむきな姿をふたたび取材させてもらった。
田中さんの生まれは愛知県名古屋市。小さい頃から絵を描くことが好きだったのは、「言葉では表せないことも絵なら表現できるから」だったそうだ。いつしか手仕事で生計を立てたいと思うようになり、デザインの専門学校へ進んだ。そんな折に、母親の故郷である富山県南砺市井波の地で井波彫刻と出会い、一瞬で魅了された。



井波彫刻は200種類ものノミを駆使して生み出す深い彫りが特徴だ。「浮き彫り」や「深彫り」などの技巧を幾重にも重ね、咲きこぼれそうな牡丹の花々や、今にも飛びかからんとする勇猛な獅子の姿などを精密に表現する。


井波彫刻の造形美に魅了された田中さんは、まず「いったいどうやって彫っているのだろう?」と驚き、やがて「自分で彫ってみたい」と思うようになった。果たしてこの気持ちが実を結び、田中さんは自分の生きる道として木彫りを選んだ。伝統工芸士・池田誠吉氏に弟子入りしたのは23歳の時だ。


5年間の修行の中で木の性質について学び、木との縁を大切にしながらひたすら師匠のかたわらで彫り進めた。晴れて一人前の井波彫刻職人として独立した後も、親方の仕事を手伝いながら着実に技量を磨いていった。



10年前、独立したばかりの田中さんが当時持っていた技術の粋を集めて完成させた大作がある。こちらの獏をかたどった「木鼻(水平材の横木が柱から抜き出た先端部分)」だ。材料に選んだケヤキは硬くて扱いにくかったが、最後までヤスリを使わずにノミだけで仕上げることで木肌に艶が生まれ、見事な作品に仕上がった。


親方の池田氏は、田中さんが「他の人にはない天性のセンス」の持ち主であると評価する。そしてその親方の言葉どおり、独立後の田中さんには全国から制作依頼が舞い込み、井波彫刻職人として立派な仕事を次々とこなしつつある。



また、彫刻家としても新しい表現を追求している田中さんは、まるで生きているかのようなリアルな生物を制作し続けている。


近道はせず、寄り道もしない。過去の自分よりも前へ、前へと、ただひたすら前進していくひたむきな精神。未来に継承していくのは伝統だけではなく、その前を向いて進み続ける生き様なのではないだろうか。


続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。



~at home presents明日への扉~

 

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ディスカバリーチャンネルにて毎月第3木曜日 19:30~20:00、再放送は翌々週の日曜日 08:30~09:00 に放送中


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Text by Discovery編集部

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