ディスカバリーチャンネル

Credit : David Marcu on Unsplash

雨の日って本当に気圧が下がっているの?天気によって体が痛くなるという明確なデータは存在せず

2019.05.21

トピックス

ジャンル
ライフスタイル
エディター
Daisuke Sato

雨の日には体がだるくなったり、頭痛がしたり、関節が痛くなると言う人がいる。

俗にいう「気象病」と言われるもので、雨など天候がもたらす何らかの要因で体調を崩すとされている。

昔から多くの人が天候の変化による体の異変を訴えていることもあり、その関連性についての研究が広く行われているが、実は雨の日に体が痛くなるという症状に対して懐疑的な意見も出ていることはご存知だろうか。

人の体はいったい天気の何に影響を受けているのだろうか。

気温や気圧が与える影響


Credit: Ben White on Unsplash

気温や気圧の変化が体調に影響を与えることはよく知られている。

人間の体は周りの環境に適応するため、適切な状態に保とうとする。例えば、大気温が高い時は、発汗作用などで熱を逃がそうとするし、外気が寒い時は、体の熱を逃さないように血流を低下させる。

この際、外気温が高いほど、血管や臓器などを調整する自律神経「副交感神経」が優位となり、寒いほど内臓の働きに作用する末梢神経「交感神経」が優位となるとされる。

短期間で大きな温度変化があるような寒暖差が大きい場合、自律神経によって体内を一定の状態に保とうとするエネルギーの消費が激しくなり、頭痛や肩こり、めまい、気分が落ち込むいなどの「寒暖差疲労」と呼ばれる状態となることがある。

雨の日の気圧の変化は人体に影響を与えるのか


Credit: Creative Commons

飛行中の飛行機の機内や標高が高い山への登山といった、高所などの気圧が低い環境で、体の異変を実感したことがある人は少なくないだろう。気圧が低いと体の中のガスが膨張するため、体の外に排出できないガスが内臓などを圧迫することによる。耳に最初に違和感をおぼえるのは、最も敏感な器官であるためだ。

飛行機の中は基本的に気圧の調整が行われているが、普段、我々が生活している地上の気圧「約1013hPa(ヘクトパスカル)」に対して、水平飛行中の飛行機内の気圧は約800hPaとなる。これは、標高2000メートルの山の山頂にいるのと同じ気圧だ。

では雨が降った日の気圧の変化はどれくらいあるのだろうか。

日本の気象庁が発表したデータによると、大雨強風警報が出ていた2019年5月21日の東京の13時の気圧は1000.1hPaで、曇りだった前日の1013.3hPaから13.2hPaの差となる。また、晴れであった2019年5月17日の東京の平均気圧は1017.2hPaだった。

台風も気圧を大きく下げると言われているが、2018年に台風が直撃した大分県の当日の平均気圧は994.4hPa。一般的に、高さ100メートルの高層マンションの1階と最上階で10hPaの差と言われている。

ちなみに、標高592.21メートルある長野県松本市の2019年5月17日の気圧は平均947.6hPaと、先の5月17日の東京の気圧との差は70hPaにもなるようだ。

地上の気圧がどこまで体調に影響するかは不明ではあるが、雨による気温の低下や湿度の変化の影響で、前述した寒暖差疲労は起こりやすい状況だと言える。

また、標高2400メートル以上の地域に行くとなりやすい「高山病」は、気圧よりも低酸素環境による酸欠状態で起こるとされる。

実は証明されていない天気の変化による痛み


Jesper Aggergaard on Unsplash

雨の日になると、頭痛がしたり関節炎が悪化すると訴える人がいるが、ハーバード大学医学大学院の准教授でリウマチの臨床主任であるロバート・シュメアリングは、関節の痛みが強くなることと、雨の日の関連性を示す証拠はないと説明する。

これは、医療機関を利用した1100万人のデータに基づいており、雨の日に診察に訪れた200万人とそれ以外の日に訪れた900万人のデータを分析したところ、雨の日に痛みが強くなるという関連性は見つからず、さらには雨以外の日の方が痛みが強くなったと診察に来た人が多いとしている。

さらに、2014年にオーストラリアで実施された調査では、雨・気温・温度・気圧と腰痛には、関連性がないことがわかっている。

昔から、雨の日に古傷が疼くという人や関節が痛くなると主張する人が多いことから、天気と痛みの関連性を探る研究は長く続けられてきている。だが、「存在しないことを証明することは難しい」ため、天気と痛みに関連はないと強く主張できる医師はいなかったとシュメアリングは語る。

シュメアリングは、人は2つのことが同時に起こる、もしくは同時に変化した、ということを記憶していると、腰が痛くなった日は雨だったと関連付けてしまうことが多いのではないかと推測している。厳密なデータベースではなく、主観的な記憶を頼りにすると、関連性がなくてもそれらが関連していると結論づけてしまいやすいということだ。

シュメアリングは、実際に関節の痛みから天候の変化がわかると訴える患者がいることは認めているが、科学的な知見からは天気と痛みの関係性については懐疑的にならざるを得ないと述べている。

Text by Daisuke Sato

関連リンク

Harvard Health Publishing (Does weather affect arthritis pain?)
気象庁(毎日の全国のデータ一覧表)
JAPAN AIRLINES(航空機内の環境について)
JAPAN AIRLINES(航空豆知識)
日本登山医学会(急性高山病)
せたがや内科・神経内科クリニック(寒暖差疲労)

最新ニュース