Credit : Kym Illman via Western Australian Museum
世界最古、およそ132年前のボトルメールがオーストラリアに漂着
2018.03.07
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デジタルなメールが主な通信手段となったこのご時世に、アナログなロマンを感じさせるニュースが流れついた。
西オーストラリア州の州都パースからおよそ180キロ離れたウェッジ・アイランドで、今まで確認された中で最古のボトルメールが確認された。「ボトルメール」とは瓶にメッセージを入れて海原に送り出す、よくフィクションで見るあの究極なアナログ式通信手段だ。
最古のボトルメールを受け取ったのはパースに住む写真家のトーニャ・イルマンさん。家族と友人と連れだってドライブを楽しんでいた2018年1月21日のよく晴れた日曜日、ウェッジ・アイランドの砂浜を散策していたトーニャさんはふと砂に半分埋もれていた古めかしい瓶に興味を持った。当初はインテリアとして家の本棚にでも飾ろうと思いながら拾ったそうだ。ところが、トーニャさんの息子さんの彼女が瓶からつまった砂を掻きだしてみると、中から細い筒状に巻かれた手紙が出てきた。 ドイツ語で印刷され、消えかけたインク文字でしたためられたこの手紙は、1886年6月12日にドイツ海軍天文台が瓶に入れて船上から放ったものだった。トーニャさんが受け取るまでじつに131年223日が経過していた。
植民地時代の手紙
Credit: Western Australian Museum
手紙には船の位置情報が記され、手紙を受け取った人が見つけた場所と日付を書きこんで返信するよう求めていた。オーストラリア海洋博物館とドイツ、オランダ政府が共同で調べた結果、ドイツの輸送用小型帆船『パウラ号』からの手紙だったことが判明。パウラ号は1864年から1933年にかけて6,000本ものボトルメールを海に放ち、海流の動きを把握する実験を行っていた。オーストラリア海洋博物館によれば、当時パウラ号はイギリスのカーディフ港からオランダ領西インド諸島のマカッサル港(現インドネシア)へ航海中で、瓶が発見されたウェッジ・アイランドからおよそ950キロ沖を通過したとみられている。
ギネス記録に?
今までギネス世界記録に登録されていた最古のボトルメールは、108年138日間漂流した後、2015年4月17日に発見されたイギリス海洋生物学会の報酬つきの手紙だった。こちらも調査の一端として2年間で1,020本も送り出されたうちの1本で、海底の流れを調査するのに使われたらしい。108年後にドイツのアムルム島で瓶を拾ったマリアンヌ・ウィンクラーさんが手紙の指示通りイギリスに送り返したところ、当時の約束どおり報酬として1シリング(現在は廃止)をもらったという。
それより前のギネス記録は99年43日漂流した手紙。ギネス世界記録のウェブサイトによれば、こちらも実験用のものだったそうだ。どれもいわばプロ仕様のボトルメールだったため、長い年月の風化にも耐え抜いたと考えられる。
Credit: PDPics / Pixabay
究極のメール
では素人レベルのボトルメールはどうだろうか。じつはこちらも意外とたくさんの数が今でも世界中の海を漂流しているらしい。
記憶に新しいのは2017年8月15日、封鎖中のガザを勇気づけた新婚カップルからのボトルメール。新婚旅行でギリシャを訪れていたイギリス人夫婦が、幸せいっぱいのメッセージを瓶に入れて地中海に流したところ、およそ1か月後にガザのジハド・アル・ソルタンさんの漁網に引っかかった。NPRによれば、アル・ソルタンさんが受け取った人生初の手紙だったという。じつはアル・ソルタンさん自身、3年前に瓶に手紙を託していた。その返事の替わりに、べつの瓶に入ったメッセージが届けられたわけだ。
Credit: 955169 / Pixabay
ボトルメールをきっかけに、送った人と受け取った人同士の交流が始まったケースもある。カリフォルニアの海岸から太平洋に瓶を託したワンダ・ロバーツさんは、彼女の手紙が3年後の2018年2月にグアムに漂着したことを知った。The Weekによれば、グアムで瓶を拾ったエドワード・ポーリーノさんの娘がフェイスブックで検索し、ロバーツさんを探し当てたという。アナログとデジタルの相乗効果といったところか。
ボトルメールの探し方
自分でも手紙の入った瓶を探してみたい?それならば、ウェッジ・アイランド、アムルム島と続いて、やはりボトルメールが漂着する確率が高いのは島のようだ。
ニュージーランド沖のチャタム諸島 – Credit: NASA
たとえばニュージーランドの800キロ東沖に浮かぶチャタム諸島。人口600人ほどのチャタム本島に住むリチャード・ゴメズさんは、自他共に認める「ボトルメール探しの達人」だ。
ニュージーランドのメディア、Stuffによれば、ゴメズさんは2年間で5本もボトルメールを発見したそうだ。自称「冒険家」であり、漁師でもあるゴメズさんの日課は海岸を歩くこと。特に探さなくてもボトルメールが見つかるという。「瓶の中には何が入っているかわからないからね。毎日が冒険だよ」とゴメズさんはStuffに話している。
ボトルメールが漂着するのは海とも限らない。汚染されたミシシッピ川のゴミを片付けるライフワークを讃えられ、2013年にCNNの「時の人」に選ばれたチャド・プレグラッケさんは、仕事として川のゴミと向き合う中でこれまでたくさんのボトルメールを発見してきた。
コレクションがあまりに多く、そして中にはあまりに奇抜や奇天烈な手紙が含まれていたため、『瓶に込められたメッセージ(Message in a Bottle)』と題した展覧会を企画したそうだ。さみしさが色濃いもの、過去の偉人を名乗るもの、呪われたもの…。人々が瓶(やペットボトル)に込める思いはそれぞれ深いものがあるという。
環境への悪影響を考えるとむやみに海にモノを投げ捨ててはいけないのだが、それでもボトルメールにはちょっと古風な魅力を感じてしまう。
Text by Discovery編集部
Oldest message in a bottle found on Western Australia beach (BBC)
‘Diese Flasche wurde űber Bord geworfen: a message in a bottle from the German barque Paula (1886) discovered at Wedge Island, Western Australia (Western Australian Museum)
Mysterious postcard found on German shore is confirmed as oldest message in a bottle ever (Guiness World Records)
From Greece, A Message In A Bottle Reaches Isolated Gaza (NPR)
Message in a bottle brings together families from Washington and Guam (The Week)
This Guy Has Probably Read Your Weird (or Sad) Message in a Bottle (Houstonia)
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