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旧人類の額の出っ張り、何故あった?

2018.04.11

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サイエンス

旧人類の頭蓋骨の展示や、その想像図を見たことがある方なら、目の上、眉のあたりが私たちよりもかなり出っ張っていることが判るだろう。最新の研究では、その理由が従来考えられていた「その方が噛みやすいから」という説が正しくないのではという意見がでている。実際は、もっと社交と関係ある理由で現生人類になるに従い小さくなっていった可能性がでてきた。

ふたつの仮説

現生人類であれば「眉弓」と呼ぶ目の上の突起部分は、旧人類や類人猿は我々よりもずっと張り出しており、「眼窩上隆起(がんかじょうりゅうき)」と呼ばれる。4月9日にNature Ecology & Evolutionに発表された研究では、この眼窩上隆起が旧人類にはあって我々にはない理由が探られている。まず科学者達が立てた仮説はふたつ。

一つ目は、この眼窩上隆起は、眼窩と脳頭蓋との位置関係により、ものを噛む仕組みと共にその大きさが関連しているのではないかというもの。そしてもうひとつは、これがコミュニケーションと関連してその大きさが小さくなったのではないかというものだ。

噛む仕組み?

Popular Scienceによれば、眼窩上隆起が大きいことで、現代色よりもより繊維の多かった食べ物を噛む時に疲れなかったのでは、という説は1960年代から存在した。

今回の研究では研究ではザンビアで1921年に発掘された、12.5万から30万年前のものとされるホモ・ハイデルベルゲンシスの化石をCTスキャンしたものからCGモデルが作られている。これを用いて計測してみたものの、眼窩上隆起のサイズが変わってもそれに伴ってかかる力はほとんど変わらないとの結果が出た。この結果は研究に当たった科学者達も意外だったようだ。

社交のため?


hairymuseummatt CC BY-SA 2.0

「眉をひそめる」という言い回しにも代表されるように、言語に頼らない微妙な意思伝達にも眉毛は重要な役割を持つ。我々は複雑な表情を進化させ、そして互いに感情を上手く伝えることができるようになったのは、目の上に出っ張りがなくなったからではないか。眼窩上隆起を持つチンパンジーは、我々のような複雑な表情を持たない。ボトックスを表情筋に注入する人は、眉を含む表情表現に乏しくなり、そうなることで他者から得られる共感は減るが、同時に自分自身も共感をすることが少なくなるという研究もある。

しかしだからといって社交のために眼窩上隆起が小さくなったという仮説を裏付ける強い根拠があるわけでは無い。少なくとも噛むことと眼窩上隆起の関連性は薄そうだと言うことが判明したこの研究だが、なぜ旧人類には眼窩上隆起があって、現生人類にはないのかは、もう少し研究する余地があるだろう。

Text by Discovery編集部

Humans may have a surprising evolutionary advantage: Expressive eyebrows(Popular Science)

Supraorbital morphology and social dynamics in human evolution(Nature Ecology & Evolution)

Kabwe 1(Smithsonian)

File:Sapiens neanderthal comparison.jpg(Wikimedia Commons)

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