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ミイラの作りかた知ってる?発掘のライブ中継も海外で話題に

2019.04.18

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サイエンス
エディター
Daisuke Sato

朽ち果てることのないその神秘的な存在から、人々の心を魅了してきたミイラ。

王家や神官の墓の発掘調査が続くエジプトでは、去る4月7日、発掘の様子をアメリカのテレビで生中継している最中に、石棺から新たなミイラが見つかったことが大きな話題となっている。

死を超えた存在であるミイラとは、いったい何なのだろうか。

目次

  • ミイラの歴史
  • ミイラの作り方
  • 全米で話題となった発掘の生中継
  • ミイラの今後


ミイラの歴史


Credit: Creative Commons

世界で最も有名なミイラは、古代エジプトのツタンカーメン王のものだろう。ツタンカーメン王の墓は、1922年にイギリス人考古学者ハワード・カーターによって王家の谷と呼ばれる地域で発見された。ミイラに被せられていた黄金の仮面や装飾品など、その姿は非常に印象的なものだった。

また、エジプトでは、人間だけでなくさまざまな動物のミイラも多く見つかっている。聖なる動物とされてきた雄牛をはじめ、ヒヒ、猫、鳥、ワニなど、宗教上特別な意味を持っていた動物たちは、王とともにミイラとして埋葬されていたのである。

なぜ、古代エジプトでは死者をミイラにしていたのだろうか。

紀元前3500年以前より前の時代では、エジプト人は砂漠の熱によって乾燥しやすい場所に作られた墓に死者を埋葬していた。この時代の遺体は、自然乾燥によってミイラ化したため、社会的な地位に関係なくその姿が残されることとなった。


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紀元前2800年頃のエジプト第2王朝時代になると、人工的にミイラを作っていくようになった。当時のエジプトでは、死後の体の保存は転生するために重要なことであるとの考えがあった。そこで裕福な者たちは、死後も平穏でいられるように、遺体をミイラにするという手の込んだ埋葬方法をとるようになったのである。

ミイラの作り方


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遺体をミイラにするためには70日かかるという。作業は解剖学の知識が必要であったため、特別な神官達によって行われていた。

ミイラにするためには、遺体を洗浄し、死亡後に腐敗が早い脳や内臓などの部位を取り除くところからはじまる。


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脳は鼻からフック状の器具を用いて除去するため、遺体の顔を傷つけることが多々あったという。続いて体を切開して内臓を取り除いていくが、人の存在や知性の中心と考えられていた心臓だけは残される。取り出された臓器は、それぞれ特別な箱や壺に入れられた後、墓地で共に埋葬される。


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防腐処理には、ナトロンという炭酸塩鉱物が使用されていた。これは塩の一種であるため、優れた乾燥特性を持つ。ナトロンで遺体を覆い、水分がなくなった頃に軽く洗い流す。目など落ち窪んだ部分にはリネンなどを詰めて顔の形を整えていたという。

神官達は、長細いリネンを慎重に体に巻きつけていく。その際、いくつかの段階で樹脂や香料を塗り、またリネンで包む。最終的に布や覆いで包み、それを麻布で固定。そこまでやって、ようやくミイラは完成するのである。


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全米で話題となった発掘の生中継


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現地時間の4月7日、米ディスカバリーチャンネルがカイロから南に約260キロ離れた中部エジプトの地下墓地で、発掘の生中継を行った。そして放送中に、2500年前のミイラを発見したのである。大神官クラスの人物のミイラが発掘された場所で、他に2つのミイラが見つかったのだ。

この発掘は冒険家のジョッシュ・ゲーツとエジプトの考古学者のザヒ・ハワスによって行われた。ハワスは50年に渡り発掘を続けている大ベテランだ。この遺跡は1927年にも大神官の石棺が見つかっているが、盗難に遭ってしまい詳細は分からずじまいだった。


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大神官の近くで見つかった1人目のミイラは、女性のミイラであった。2人目のミイラは「家族の墓」と呼ばれる場所で発見された。この「家族の墓」の中には、古代エジプトのボードゲーム、家族で飼っていた犬のミイラ、そしてミイラの臓器を保管するための壺が見つかった。遺留品から、2番目のミイラは、Thothと呼ばれる古代エジプトの神の寺院の歌手であることがわかった。

生中継で、アメリカの視聴者はこの歴史的発見を目撃したのである。

ミイラの今後


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ミイラの研究は、エジプトのミイラ化のプロセスやその時代の文化を理解することに役立っている。長く行われている研究だけあり、現在ではX線などを用いて、ミイラを傷つけることなく調べられるようにもなった。

何千年も昔の死者たちは、その体をもって現代の私たちに語りかけているのである。

Text by Daisuke Sato

関連リンク
Smithsonian (Egyptian Mummies)

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